いまさら聞けない!
クラウドコンピューティングとは?
IoTとクラウドコンピューティングの課題

 2025年7月8日

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近年、クラウドサービス市場は急速な勢いで広まっています。日本の市場に関して言えば、新型コロナウイルス感染症の影響によりオンプレミス環境からクラウド環境への移行が進んだことを背景に、2022年時点で前年度から約30%増の2兆1,594億円にまで増加※1し、世界のパブリッククラウドサービス全体への支出額も2023年に5,636億ドルまで増加※2した(総務省 令和6年版情報通信白書)と見込まれています。近年関心の高まる生成AIやIoTなどの新技術の普及にもクラウドサービスは不可欠であり、今後の成長も期待される分野と言えるでしょう。

今回は、前回ご紹介したエッジコンピューティングに引き続き、第2弾となるクラウドコンピューティングの特徴、それが普及した背景と、IoTとクラウドコンピューティングの相互作用や課題について探っていきます。

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いまさら聞けない!エッジコンピューティングとは?
IoTとエッジコンピューティングの今後
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1. クラウドコンピューティングとは?

クラウドコンピューティングとは、インターネットなどのコンピュータネットワークを経由してコンピューティング、データベース、ストレージ、アプリケーションをはじめとした、さまざまな ITリソースをサービスの形で提供する利用形態を指し、略してクラウドとも呼ばれます。

2. クラウドコンピューティングが普及した背景

クラウドコンピューティング(以下、クラウド)という概念は、1997年当時に南カリフォルニア大学の教授ラムナト・チェラッパ(Ramnath Chellappa)によって学術的に定義されました。その後十年ほどの時を経て、2006年に開催されたイベント「Search Engine Strategies Conference」においてGoogle社CEOであるエリック・シュミット(Eric Emerson Schmidt)氏が、再びクラウドに触れたことで、商業的に広く認知される現在のクラウドが確立されたと言われています。

クラウド以前には、1980年代のスーパーコンピュータの時間貸しサービスから始まったユーティリティコンピューティングや、アプリケーションサービスプロバイダといったサービスが存在しましたが、当時のコンピュータ自体の処理速度や通信の速度といった問題も相まって、普及にはいたりませんでした。

※ユーティリティコンピューティング:コンピュータの処理能力や記憶容量といったコンピューティング資源を、必要なときに必要なだけ買い足して用いることを可能にするサービス方式のこと

※アプリケーションサービスプロバイダ:ネットワーク経由で顧客にアプリケーションを提供するサービスまたはその事業者こと

3. クラウドコンピューティングの特徴

また、クラウドが普及する前は、パソコンなどのローカル端末にアプリケーションやソフトウェアの本体をインストール、保管することが一般的でした。一方、クラウドでは、ネットワークを介することで必要な時に必要とする量のITリソースへ簡単にアクセスすることができます。実際に処理を実行するサーバ、ストレージ等はサービス提供事業者側のデータセンター内に設置されており、ユーザーは最低限の初期投資でサービスを享受することができます。また、リソースの増減も簡単です。こういった特徴から、クラウドの導入は大規模な組織レベルでの情報システムの構築・維持のコスト削減につながるだけでなく、自前で情報システムの構築・維持を行うことが難しい中小企業等の組織にも急速に広がりました。そういった特徴から、クラウドは現代社会に欠かせない技術となっています。

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4. クラウドコンピューティングとIoT

元はと言えば、ITリソースをより安価な形で享受する目的で広がったクラウドですが、クラウドの登場により一組織が保存可能なデータ量は飛躍的に増加しました。そこにはいわゆる「ビッグデータ」と呼べるような莫大な量の情報が蓄えられており、今後は多様なデータの連携による様々な分野への活用が期待できます。

たとえば、IoT分野は、クラウドとのさらなる連携が最も期待できる分野の一つです。IoTとはInternet of Things、つまり様々なモノがインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み全般を意味します。IoT製品にはそれぞれセンサーやカメラなどが内蔵されており、それらの計測データをクラウド上にアップロードすることができます。そのため、一つ一つの製品から得られるデータは少量であっても、様々な切り口でデータ分析を行うことができるのです。また、AIにこれらのデータを応用していく場合、状況に応じてプライバシーやアルゴリズム等に関してカスタマイズが必要となるため、それらの効果的な導入にはクラウドの活用が必須となります。

実際に、手元のデバイスから取得した体温や脈拍といったバイタルデータがクラウドに上げられ、それをAIが分析することで専門家のアドバイスがスマートフォンのアプリに届いたり、スマートホームデバイスが毎日のユーザーの活動を把握することで、クラウドを介して新たな節電方法をアドバイスしてくれたり、といったサービスも生まれ始めています。

《 参考 》
NTTPC、最新の生成AI活用で健康経営の実現に貢献する「健康経営アドバイザーAI」を提供開始~専門家の知見を学習したAIによるサポート機能で従業員のセルフケア促進と企業の職場環境改善に貢献~

https://www.nttpc.co.jp/press/2025/01/202501161500.html

また、クラウドでは実際に利用量に応じたリソースの調整を手軽に行うことができるため、データ量の増加に応じてリソースを増やすこともできますし、季節や条件によってデータが少ない場合には、コストを圧縮できる可能性があることも大きなメリットと言えるでしょう。さらには、ユーザーはクラウドを介してどこからでもIoTデバイスにアクセスが可能になる場合もありますし、その場合はクラウドプラットフォーム上で様々なシステムやプロトコルを簡単に接続していくこともできます。

以上のように、クラウドはIoTデバイスから取得されるデータとの兼ね合いによりさらなる発展が期待でき、クラウドを利用し連携・分析させることで、データの効率的な利用も可能になるのです。

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5. 現行のIoT化におけるクラウドの課題

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一方で、クラウドコンピューティング特有の課題も存在します。例を挙げると、デバイスとクラウド間の接続に遅延が発生した場合、リアルタイム操作が中断される可能性があります。特に近年は、リアルタイム通信技術の重要性が高まっています。たとえば、工場の生産ラインで1マイクロ秒(㎲)以下の精度で各工程の時刻同期を可能にするTSN(Time-Sensitive Networking)規格は今後、各所のスマート化に貢献できると期待が高まっていますが、このようなリアルタイム操作の前提が通信遅延などによって崩れてしまうと、大型機械や多数のロボットを、正確に操作し続けることは難しくなってしまいます。

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また、IoTデバイスによって生成される膨大な量のデータを適切に管理・分析を行うには困難が伴います。特にネットワーク接続されたデバイスの場合、プライバシーを維持しながら膨大な量のデータのセキュリティ状態を確保するのは難しいですし、また、 大量のデータをクラウドに送信するには多くの帯域幅が必要になるため、その部分が課題となる可能性もあります。

つまり、クラウドをIoT分野で適切に使いこなしていくためには、通信が遅延するリスクや、セキュリティの漏洩リスク、さらには、大量のデータ送受信に耐えうるネットワークの設計に留意する必要があるのです。

6. まとめ

いかがでしたか?
今回の記事をまとめると、以下のようになります。

  • クラウドは自前の情報システムを持っていない場合にも手軽に導入が可能
  • クラウドは必要に応じたリソースの増減が容易で、コストの削減が期待できる
  • クラウドサービス内において情報アクセスの柔軟性があり、データ分析なども行いやすい
  • IoT機器との通信遅延により、リアルタイム処理に問題が生じるリスクがある
  • 大量の情報が機器間でやり取りされるため、セキュリティや帯域幅に留意が必要

次回は、エッジコンピューティングとクラウドコンピューティング、それぞれのIoTソリューションへの活かし方についてご紹介したいと思います。

前回ご紹介したエッジコンピューティングについての記事は下記をご覧ください。

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