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オープン化とは?オープン化のメリット、デメリット
2024年10月8日
現在、さまざまな分野で仕様のオープン化が進んでいます。オープン化とは、主にIT用語ではハードウェアやソフトウェアの内部仕様や通信規格、設計思想などを公開することを意味します。ハードウェアメーカーが自社製品の情報を公開することもあれば、各種ソフトウェアの開発において沢山のエンジニア達の協力を募るために、敢えて情報をオープンにすることもあります。
今回は、そんなオープン化の歴史や、メリット・デメリットをまとめてみました。
1. オープン化とは?
オープン化とは、一般的にコンピュータや周辺機器のハードウエア・ソフトウエアに関する内部仕様や設計思想などを公開することで、全体的な標準化を進めることを指します。
かつて1980年代頃までは、機器や部品、ソフトウェアなどの仕様や設計、構成要素間の接続、連携、通信などの方式といった要素を公開したり、他社と共通化したりすることは一般的ではありませんでした。対応製品についても、開発元メーカーや個別に契約した提携先だけが対応製品を作ることができるのが通常であり、現在でも、アップル社がiOSのコア部分を公開していないことは、こういった姿勢の一つの例です。一方で、オープン化は、業界団体が標準規格を策定し、これに基づいた製品を設計・製造したり、既存の技術や製品の仕様を一般に広く公開したりすることで、対応製品や互換製品を作れるようにする動きを示します。
前者のようなオープン化されていないシステムは、クローズドシステム、あるいは、ベンダー独自仕様のものであればプロプライエタリシステム(proprietary system)と呼ばれ、区別されています。
オープンシステム | 仕様や設計を広く公開しているシステム |
クローズドシステム | 仕様や設計などが公開されていないシステム |
プロプライエタリ システム |
公開されていない特定ベンダーだけの独自システム |
システムをクローズドなままにしておくことは、競合との差別化をはかるためにも重要です。しかし、多くの技術領域でオープン化が進められてきたのはなぜでしょうか?
各分野でオープン化が進んできた背景には、大きく分けて二つあると言われています。
オープン化が進む意外な背景① - 独占・寡占市場の加速化
まず1つ目は、『特定の企業による市場の独占・寡占が加速』することでオープン化するパターンです。
特定の企業による市場の独占・寡占が加速し、その市場が大きくなれば、その市場は特定の企業の仕様だけとなり、『事実上の標準化(デファクトスタンダード)』となります。しかし仕様を囲い込んでいるため、当然のことながら他社との互換性が乏しくなります。その結果システム構築の選択肢が狭まるだけでなく、すべてのシステムを構築する上で同一企業のものを使用せざるを得ないために費用も嵩んでしまうという問題が起こってしまいます。
このような選択肢の少なさにユーザー側がうんざりし、自由度を求め始め、徐々にオープン化が進むのです。
昨今、世界的にオープン化に向かう傾向が強くなってきているため、このような流れは必然となってきています。
オープン化が進む意外な背景② - 技術協力を得るため
そして、もう1つは、『世界中から技術協力を得るため』です。
新しい技術領域の製品は多くの場合、特定の企業内のみでユーザーの要求に対しタイムリーに問題を解決することや短期間で品質を安定化させたりするのが難しい傾向にあります。こういった弱点を補うため、敢えて情報をすべて、あるいは部分的にオープンにすることで問題の発見や対策、技術発展や品質向上に協力してもらうといった点が挙げられます。
後者は特にソフトウェアの領域(≒オープンソースソフトウェア)でよく行われています。また、完全なオープン化とは異なりますが、昨今発展が進むAIの開発などでも、情報を敢えて公開することにより協力して技術を発展させていく姿勢はよく見られるものです。
2. オープン化の特徴とそのメリット
先に述べたように、オープン化は新たな企業による参入のハードルを下げ、市場競争を活性化させる側面があります。例えば最近では、聖域とも呼ばれたほどオープン化が難しいと思われていた光伝送機器のオープン化が話題となりました。
《 参考 》
もはや「聖域」なし、光伝送機器のオープン化が世界同時多発で加速 | 日経XTECH
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02131/080800002/
また、もちろんオープン化による恩恵を受けるのは、参入企業だけではありません。オープンなシステムは、特定のメーカーに限定されることなく、複数のメーカーから提供されている製品を自由に組み合わせてシステムを構築できるのが特徴です。つまり、システムの採用側からしても、柔軟性が高く、最新の技術動向も取り入れやすいオープンシステムを採用することで、コストダウンになる場合も多くあります。さらに機密性の高いクローズドなシステムと、オープンなシステムを組み合わせることで、より最適な形でのシステム運用が可能になると言えるでしょう。
あらゆるデバイス、ビルディングシステムを統合
2025年の崖とは、経済産業省が「DXレポート」で提示した、日本企業が各国で進むデジタル競争に敗れ、危機的状況に瀕することを指す言葉です。
現在多くの日本企業が、ビジネスの成長や競争力強化のためには、新たなデジタル技術の活用が必要不可欠であると理解しています。
その一方で、既存システムの多くは縦割りの事業部門ごとにカスタマイズ・構築されており、全社横断的なデータ活用が困難となっているのです。また、旧来システムを維持するのにも特定分野のエンジニアを集める必要があり、いずれにしてもコストがかかります。
こういった企業の課題を解決できない限り、大規模なデジタル・トランスフォーメーション (DX) が実現できないのみでなく、2025年以降、最大で12兆円/年 (現在の約3倍) の経済損失が生じる可能性があるとされており、この問題を「2025年の崖」と表現しています。このような問題にも、オープンなシステムの導入は大きな解決策となりうるかもしれません。
3. 明らかになってきたオープン化のデメリット
しかしながら、オープンなシステムの抱える大きな懸念点は、セキュリティに関する点です。例えば、オープンソースソフトウェア(OSS)は、利用者の目的を問わずソースコードを使用、調査、再利用、修正、拡張、再配布が可能なソフトウェアの総称ですが、こういった特性から、OSSには、何か問題が起きた際にもボランティアによる解決を待たなければいけないリスクや、悪意をもった第三者によるソースコードの改変といったリスクが存在します。
圧縮ツール「XZ Utils」に仕掛けられたバックドア
2024年3月29日、マイクロソフト社のエンジニアであるAndres Freund 氏は、ログインが半秒遅かったことに違和感を覚えたことから、XZ Utils というオープンソースのデータ圧縮ツールの実験版に仕掛けられたバックドア※1を発見しました。このバックドアは、秘密鍵を持つ人物は世界中のSSH※2サーバにアクセスできるようになる、つまり「侵入者がSSH認証を破ると、リモートでシステム全体への不正アクセスを可能にしてしまう」という非常に広範囲なリスクを伴うものであり、共通脆弱性評価システムスコアにおいては、最高スコアの 10.0 が割り当てられています。そして、その手口は驚くべきものでした。
バックドアを仕掛けた驚くべき手口
OSSには一般的に、有志によるオープンソースソフトウェアの開発・改善、情報交換などを目的としたコミュニティが存在します。このバックドアは、「Jia Tan」もしくは「JiaT75」と名乗るユーザーによって仕掛けられましたが、彼もしくは彼女は、なんと約3年にわたってこのようなコミュニティの内部で信頼を獲得したことで、プロジェクトの支配権を移譲され、この恐ろしいバックドアを仕掛けることに成功したのです。オープンソースの文化がはじまって以来、「悪意をもった誰かがプロジェクトに参入してきたら?」というリスクは、しばしば議題にあがることでしたが、これほどまでに大規模な仕掛けを実行した例はかつてなく、ソフトウェア業界に大きな衝撃を与える事件となりました。
《 参考 》
ウィキペディア:XZ Utilsのバックドア
https://ja.wikipedia.org/wiki/XZ_Utils%E3%81%AE%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%89%E3%82%A2
OSSは、代表的なOSSであるLinuxを用いてGoogleが開発したAndroidなど、実は生活のいたるところに存在しています。今後、OSS、ひいては、このようなオープンなシステムが抱えるセキュリティの問題にどのように対処すべきか、開発者側もユーザー側も頭を悩ませることになりそうです。あるいは、オープンなシステムであることに関わらず、悪意を持ったプログラマーが、プロプライエタリなソフトの開発に関わるといったシナリオも今後は懸念すべきなのかもしれません。「何も信頼しない」を前提に対策を講じるセキュリティの考え方であるゼロトラストを前提としたITシステムの構築が、今後はより一層重要になってきそうです。
4. まとめ
オープン化のメリットとデメリットについてまとめると、以下のようになります。
クローズドな システム |
オープンな システム |
|
---|---|---|
メリット |
|
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デメリット |
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オープンなシステムとクローズドなシステムとをうまく取り入れて、より効率的なシステム運用に役立てましょう。
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