悪夢のメール其の一
デスクからマウスが落ちた。
「で…電気工事士…!」
それは、『CBS事業部の皆さんへ』と書かれた事業部長からのメールだった。
にわかにザワつく事業部内。
Sanko IBのCBS事業部に所属する者は、営業、エンジニア、職種に関わらず第二種電気工事士資格を取得すること。
「・・・」
そっとパソコンを閉じる。
きっと空目だろう―
またそっとパソコンを開く。
受信トレイに鎮座している件のメール。
あぁ…夢じゃなかった―(絶句)
現実を受け入れるために資格試験の公式ホームページを開いてみる。
晴れやかなイメージ写真が掲載されているが、私の心はどんよりだ。
なになに、第二種の電気工事士は、
「一般の住宅や小規模な店舗など、600V以下で受電する設備の工事」
ができるらしい。
手に職をつけたら会社をクビになってもやっていけるかもしれない……いや、そうじゃない…!
こうして私の運命は、この一通の悪夢とも言えるメールから始まったのだった。
この時の私は、突然突き付けられた現実を受け止めるのが精一杯で、これから先に何が待ち受けているのかなど、知る由もなかった―
つづく
第一話 第一話 其の二