Win-WinならぬWin-Win-Win?
LED照明を0円で提供する「省エネby自販機(エネルギーオフセットサービス)」開発秘話

 2023年10月12日

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知る人ぞ知るSanko IBの隠れたサービス「省エネby自販機(エネルギーオフセットサービス)」。他社にはない独自のスキームで、サービス提供開始当時から営業を続けている西日本事業所 EOS営業部 木村部長にサービスの開発秘話についてインタビューしました。

木村 卓司 (西日本事業所 EOS営業部 部長)

「省エネby自販機(エネルギーオフセットサービス)」立ち上げの一人。
このサービスを10年以上営業しているエキスパート。

1. きっかけはLED蛍光灯が「高すぎた」こと

ーー 木村さん、本日はよろしくお願いいたします。
まずは、「省エネby自販機(エネルギーオフセット)」の概要を教えてください。

木村 企業の敷地内にある飲料自動販売機(以下、自販機)の契約内容や売上状況を確認し、既存および新規自販機会社と交渉を行い、自販機の販売促進費を使用できる環境を整えLED照明設備の資金として調達をするサービスです。
お客様は費用負担0円にてLED照明の設置ができるスキームです。

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省エネby自販機
(エネルギーオフセット)
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ーー このサービスを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

木村 当サービスはSanko IBと合併する以前の会社で、LED照明の販売をいかに進めるかという難題に直面したところから始まります。
当時はLED照明が出始めたばかりの黎明期で、蛍光灯タイプのLED照明が1本12,000円。とてもじゃないですが普通に売ることは難しかったのです。対する通常の蛍光灯は1本1,000円以下でした。
「LED照明を導入したい」というニーズはあるもののLED照明の価格が高かったため、うまく売ることができません。販売方法を模索していたところ、その時の上司の前職が自販機の運営会社だったこともあり、損益状況や業界の問題点などに明るく、「もしかすると売れるかも?」となったのが始まりです。

LED蛍光灯

2. 節電要請によりLED照明提供サービスが加速

ーー その時の市場環境はどんなものだったのでしょうか?

木村 自販機会社の状況を説明すると、自販機台数は全国に240万台。
完全に飽和状態となっている業界で、各自販機会社が他社の自販機会社が他社の自販機の設置場所を取り合う形となっていました。 そこで各飲料メーカーは自社ブランドの自販機を設置するため販売促進費を設け、必要に応じて販促費を使用をしていました。例えば、自販機置き場に屋根を設置するなどです。
しかし、お客様にとってのメリットが少なく、競争は激しくなるばかり。そんな時に起こったのが、あの東日本大震災です。
電力不足による大規模な節電要請が敷かれ、電気を使用しないと運営が出来ない自販機には大打撃となります。
幸か不幸か、この節電要請が功を奏することとなり、LED照明の提供サービスが浸透することになったのです。そしてその時に生まれたのが「自販機が使用する消費電力量はLED照明が削減します」という謳い文句です。これが「エネルギーオフセットサービス」の由来です。
「自販機が使用する消費電力量はLED照明が削減します」と言っても自販機の照明をLEDに替えるというわけではなく、あくまでもオフィスや店舗の照明をLED化するという話です。

LED照明の社会的ニーズと自販機業界のニーズにうまく合致する形となり、販促費を使って自販機に屋根をつけるより、自販機設置先の企業にLED照明を設置する方が喜ばれるということを認識していただけるようになりました。その上、弊社の事業スキームは5年間となり、この5年間は自販機会社同士で設置場所を取り合う競争がないことも自販機業界にとっては嬉しい状況となっていると思います。

自動販売機

3. 「タダより高いものはない」に大苦戦

ーー 一気に花開いた印象ですが、サービスを開始した当初の手ごたえはどんな感じでしたか?

木村 当初はLED照明のニーズがあったため、約3割のお客様のアポイントが電話で取れ、説明をすることができればほとんどのお客様が契約していただける状況でした。しかし、約7割の方は「0円提供」というワードが引っ掛かり、「何か裏があるのではないか?」と、門前払い。「タダより高い物はない」とよく言いますが、誰が言ったのか、当サービスにとっては大打撃です。0円であるがゆえに、残念ながらこの問題は現在も進行形です。誰でも知っているような大手企業であればもっと成約できたのかもしれないと、己の営業力の無さを嘆いております。

4. お客様との嬉しいできごと、福が舞い込むサービス?

ーー 正直な話、私も初めて聞いたときは疑ってしまいました、すみません。そんな営業活動をされている中で当時の忘れられないエピソードなどあれば伺いたいです。

木村 なんだかんだで事業開設から10年が経過しました。当初契約していただいたお客様は、ご契約の更新3回転目を迎えました。
なぜ、事業存続ができたか?それは成約したお客様からのご紹介があったからこそです。これは、特に忘れられない某運輸会社様でのエピソードです。

某運輸会社様でのLED照明の設置も無事終わった数か月後、たまたま近くに訪問先があったので突然お伺いした時のことです。
会社にお邪魔すると、タイミング悪く社長様は商談中。諦めて帰ろうとしていたところ、私の声が聞こえたのか商談室のドアが突然開き、私の顔を見るなり「少し待ってください」とのこと。まもなく商談室からは「どうも、また後日」との声が漏れ聞こえ、相手先が帰ることになったようでした。なんの用事もなく訪問したため、大変申し訳ないことをしたと思いました。すると商談が終わった社長が満面の笑みで近づいてきてくれたのです。

「それで、今日はどんなお得な話を持ってきてくれたのかな?」

と聞かれ、びっくりです。だって、なーんにも持ってないのですから!
「なんもないですよ、近くに来たものですから」と伝えると、

「君が来ると福が舞い込むから無下にできない」

と言われ嬉しかったことを思いだします。長年営業職をやっていて初めての経験でした。この事業を行って間違いなかったと思えたエピソードです。
社長様はその場で数件のご友人に電話を入れてくださり、案件のご紹介をしていただきました。

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省エネby自販機
(エネルギーオフセット)
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5. なかなか理解してもらえない難しさも

ーー それは営業冥利につきますね!では逆に難しかったことは?

木村 難しい点は、やはり「0円提供の説明」です。
0円であるがゆえに言葉で伝えるのがなかなか難しいです。何年も同じ説明をしているのですが、伝えることの難しさを痛感します。私の中では、完璧にお伝えしていると思っているのですが……。
信用してもらえないですね。
もっと多くの企業様にお伝えしたいのですが、広報活動は飲料メーカーとの制約があるため、お客様同士の紹介や口コミ頼みになってしまうのが歯がゆいところです。

それに新規営業が未だ難しいです。グイグイ行くと余計ダメ。行かないと前に進みません。以前はLEDのニーズが多かったので、次々とわかってもらえるお客様を優先してきたのですが、今ではLED照明は当たり前となってしまっているところがあるため、ニーズが減ってきています。ですので、今後はLED照明ではなく別の商品に切り替えることも視野に入れ活動を続けています。
営業マンを抱え法人営業をされてる企業様とアライアンスを組めるように頑張りたいと思っています。その企業様の商品を我々が買い取り、その商品をLED照明の代わりにお客様へ0円で提供することもできると思います。

6. Win-WinならぬWin-Win-Win

ーー このサービスが広く理解されて、さまざまな企業がこのサービスを利用していただけるようになるといいですね。では最後に伝えたいことをどうぞ。

木村 10年間で7万本以上ものLED照明を0円で提供してきました。現在も提供本数は増え続けています。微々たるものですが日本の電力量の削減にも寄与していると自負してます。

この事業スキームを通じてわかったことがあります。
通常の商取引は2者間です。この事業スキームは3者間となります。2者間では、お互いに満足感を得ることは難しく思えたのですが3者間では、Win-WinならぬWin-Win-Winの関係が確実に成立します。今後もこのスキームで商品を替え、活動をしていければと考えています。

 

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