無線LANのさらなる活用に向けて(前編)
無線LAN安定運用の成功の秘訣とは?

 2022年11月29日

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無線LANは企業だけでなく、大学/学校や病院、公共機関などの職場では当たり前となり、無線LANだけで業務環境を構築している職場も珍しくありません。最近では、PCにLANケーブルを挿して使うということ自体、知らない人が増えているそうです。

今や無線LANは業務推進の重要なITインフラとなるにつれ、IT部門の皆様の責任も重くなってきています。

そこで今回は、無線LAN安定運用でお悩みの方に、Extreme社(旧Aerohive社)の無線LAN製品の販売活動に携わっている弊社から、販売代理店様やお客様への提案活動やサポート対応の経験から得た「無線LAN安定運用の成功の秘訣」についてお伝えします。
これまでの技術や以前からお伝えしているお馴染みの内容も含めて、無線LANの安定運用にお悩みの方に今すぐ試してほしい内容となっています。

1. 無線LANの安定運用の成功の秘訣

無線LANの安定運用の成功の秘訣、ベストプラクティスといっても様々な論点がありますが、ここでは下記の6つを取り上げます。
これまでのサポート実績から得られた知見を踏まえて具体的な内容をお伝えします。

(1) システムのデザインと製品選定

安定運用が確認できるのは、システムの稼働後のことなので、そもそもの製品選定とは無関係と思われがちですが、実は無線LAN製品においてはこの製品選定が導入後の安定運用に最も大きな影響をもたらすと弊社では考えています。

一般的にもシステムの安定運用のコツは、サーバやネットワークや回線などの構成要素を極力減らし、データのトラフィックも極力シンプルかつ少なくすることと言われています。一度決めるとなかなか変更ができないため、この決定はとても重要です。

無線LAN製品は実現するべき機能や相互接続性の保証のために、電波法、IEEEの規格、Wi-Fiアライアンス認証などの基準を守る必要があるため、どの製品も基本仕様は同じである必要があります。そのため無線LAN製品については、どの製品を選定してもほとんど大差はないはずと思われがちです。

しかし、複数のアクセスポイント(以下AP)の制御方式、アーキテクチャーは下記の観点で大きく異なります。この違いがネットワーク全体の複雑性やサーバ・回線の二重化の要件に影響し、結果として安定運用の実現方法や維持管理の負荷に大きく影響します。

  • 無線LANコントローラがクラウド型かオンプレミス型か
  • クラウド型の場合、クラウドにアクセスできない場合どのような影響があるか
  • 無線LANコントローラをどこに設置するか
  • そもそも無線LANコントローラが存在するか、存在しないか

認証機能についても下記のように同様なことが言えます。

  • 認証方式として何を選択するか
  • 認証システムを支えるRADIUSサーバにどの製品やサービスを選定するか
  • 二重化するか、しないか
  • そもそもRADIUSサーバを導入するか、しないか
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(2) 導入時の設計

設計において重要なことは無線LANの設定内容自体をできる限りシンプルなものにすることです。これまでの弊社の経験では下記の点に気を付けることで大幅にシンプルな設計にできます。

  • 以前に導入していた製品の設定内容を踏襲せず、今後の利用方法や見通しを踏まえてゼロベースで設計を行う
  • 拠点や場所ごとに類似の状況において設定情報をできる限り共通化し一種類の設定にする
  • 製品選定時に評価した各種チューニング項目(バンドステアリング、ロードバランス、高密度環境設定やメーカー独自の最適化機能など)を最初から設定せず、デフォルト設定を採用する(弊社の経験ではデフォルト設定が最も安定します)
  • 現時点のAPのファームウェアバージョンの推奨版を確認してからそのバージョンに全APを合わせる
  • Syslogサーバを導入する(強くお勧めします)
    新システムでの検証時やテスト利用時にSyslogデータの解析を念入りに行い、気になるログデータが出ていないかを確認する
    その際には各機器の時刻を合わせるのも重要
  • APごとのTechデータの取得も行い、想定した動作(電波強度やチャネルの調整など)をしているかの確認を行う
  • 一部のパイロット拠点にて試験運用してから全数展開する
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無線LANの通信速度を改善する対処法と問題点
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(3) 導入直後の微調整

新しい無線LAN製品の管理システムと以前導入していた無線LAN製品の管理システムとの統計データを比較して、利用者様からの感覚的な申告以外に、データに基づき導入前後で問題が出ていないかどうか、期待性能が発揮できているか、以前と比べて改善できているかを確認できるようにしておきます。問題があればこの時点でよく調査して改善します。

無線LANの各種チューニング設定を実施したほうがよいかどうかを決める場合は、一旦代理店様経由でケースオープンし、ご相談することをお薦めします。現在起きている問題が、そのチューニング設定と本当に関係しているものかどうか、本当に有効な対策なのかどうかの綿密な事前確認が必要です。

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(4) 定期メンテナンス

毎月などのタイミングで、ご利用の無線LAN製品の管理画面やSyslogサーバのデータを分析しエラーメッセージが出てないか、などを確認します。

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APに不具合が出ていなくてもファームウェアのバージョンは月日とともに最新バージョンに対して古くなっていきますので、半年や1年ごとに適切なファームウェアにバージョンアップします。
この作業のためのダウンタイムの必要性については本格稼働前にエンドユーザ様とルールを作っておきます。

(5) トラブル発生時の切り分けと解決方法

無線LANのトラブルの発生が認識されるのは、利用者様からの申告によるものが最も多いと思われます。トラブルには拠点やフロア全体の場合と、特定の利用者様(端末)の場合があります。いずれも、昨日まで、さっきまで問題なく使えていた、という場合や、以前からなんとなく調子が悪いので今日改めて申告した、ということが多いです。

拠点やフロア全体の場合はその問題の範囲を特定するために、他の拠点の利用者様でも同様なことが起きていないかを念のために確認します。
同時に当該のエンドユーザ様内で問題となっている複数のAPが接続されているネットワーク機器の問題や設定変更の有無を確認します。一斉に全APが故障するということはあまり考えられないためです。

APの問題かどうかの切り分けには下記のような観点でヒアリングをします。

  • 最近、ネットワーク構成や回線やサーバの変更があったかどうか
  • 最近、急に利用者様や端末数が増えたかどうか
  • 通信経路による違い
  • 端末(機種やOS)による違い
  • 場所による違い
  • アプリケーションによる違い など

APに起因している問題かどうかの切り分けのための確認項目を予め決めておくとトラブル対応の手戻りを防げます。

AP以外の要素かどうかの切り分けの結果、APに原因があると想定され、特定の利用者様(端末)だけで申告があった場合は、利用されている無線LANシステムの各種管理画面や分析画面を確認して当該の利用者様の端末や接続されていたAPのログデータを取得し解析します。

最も詳細なデータを確認するためには、その利用者様が接続しているAPのTechデータ(ログ)を取得し、解析をします。問題発生直後であればその時にAPで何が起きていたか、の手がかりが残っている可能性がありますので、問題発生直後にTechデータを取得することは非常に重要です。

Techデータは常に直近数時間分の詳細ログを取得するものです。記録領域が限られていますのでどんどん上書きされてしまいます。過去の事象の前後のログデータはSyslogサーバに蓄積することが可能です。このSyslogサーバのデータを解析することで過去に起きていたことの解析が可能です。Syslogサーバを導入して日常的にデータを分析されているエンドユーザ様ではタイムリーな解析や対処が可能となります。

Pingをベースとした機器の死活監視を中心とした管理システムだけでは複雑化したネットワークトラブルの原因究明には情報不足となることが多いため、各種のログの取得は必須となっています。

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(6) 拡張や移転などの変更対応

無線LAN設置拠点の追加や拡張、移転などによるAP追加の際には、設定内容に関して管理ができていないと、設定内容が意味なく複製され、それに対して設定情報が追加され、当初の設計思想とは異なる設定内容が実装されてしまうリスクもあります。
(2)の「導入時の設定」で決めた方針や設定情報をそのままコピーして対応できるようにするのが理想的です。

エンドユーザ様内での対応チームが案件ごとに異なる場合や、人事異動で新しい担当者の方が設定作業を実行する場合でも、今一度、この設定内容は元々どういう考えに基づき決めたのか、を十分に確認することが大切です。

拡張や移転などの範囲を超える大きな改変としては、新本社へのオフィス統合やM&Aによるこれまで別会社であった会社への無線LANシステム導入などがあります。この場合も「導入時の設定」に立ち返り、一度決めたポリシーの踏襲をするのか、変更するのか、どうすればシンプルな設定になるのかを検討する必要があります。

2. まとめ

いかがでしたでしょうか。弊社としては(1)の「システムのデザインと製品選定」を含めた安定運用を検討することが重要と考えています。

最後に、ここで紹介した6つの成功の秘訣を表にまとめてみましたので無線LANの運用にお悩みの方は参考にしてみてください。

無線LAN 安定運用のベストプラクティス
   
安定運用の要素 テーマ 内容
システムデザイン 製品選定
  • 究極にシンプルで障害ポイントのないシステム構成を実現できる製品を採用する
導入時の設計
  • 全拠点共通な設定情報に調整する
  • デフォルト設定(チューニング設定しない)最優先
  • 慎重にファームウェアを選定する
  • Syslogサーバを設定する
運用体制の充実度 導入直後の微調整
  • データやログによる前システムと比較検証を実施し安定運用ができることの確認をする
定期メンテナンス
    • 計画的にファームウェアを選定しアップグレードする
トラブル発生時の切り分けと解決方法
  • 切り分けのための環境面の情報収集
  • データに基づく原因究明のための基盤を整備する
  • Techデータのタイムリーな取得と解析
  • Syslogサーバのログの解析
拡張や移転などの変更対応
  • 導入時の設計内容に基づき、個別対応しない
  • 本社移転やM&Aなどの大きなイベントには、元の設計内容を再検討する

今回の「無線LANのさらなる活用に向けて(前編)」では、実経験から得た無線LANを安定的に運用していく上で必要となる内容をお話しました。次回配信予定の後編では、より無線LANを活用するため、ガートナー社が提唱しているAIOPs(Artificial intelligence for IT Operations エーアイオプス)について、弊社の考え方や製品の情報についてご紹介する予定ですので、是非ご期待ください。

当ブログの記事をまとめた資料をご用意しておりますので、ご希望の方は、下記よりダウンロードください。

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